第11話〜第20話

第11話 贈り物
ある日、ひとりの男の前に
黒い服を着た女性と、赤い服の女性。
そして白い服を着た女性が訪れて来た。

黒い服を着た女性は、とても神秘的に彼を魅了する。
だけど同時に彼を不安な気持にもさす。

赤い服の女性は、とても情熱的な言葉を口にしながら
彼の心を惑わす。
でも心が見えない。

白い服を着た女性は、何も言わず彼を見ているだけ
その瞳は、忘れていた遠い日々の彼を思い出させる。
なのに彼は、彼女の顔を記憶することが出来ない。

そして突然、彼女達は姿を消した。
それぞれが身に着けていた衣類だけを残して・・・

 

最後に一言。

何が言いたいのでしょうかね?

第12話 聖女
息絶えてゆく隣人を冷たい瞳で見つめている女がいた。
そして女の瞳は、可愛がっていた猫の死に涙する。

美しい詩を歌う声は、怒りに唇を震わせ
今、親しき友人を死に追い遣ろうとしている。

女の透けるような白い指は、美しい音色を醸し出し
昨夜、その手が恋人の血で紅く染められていた事を忘れさせる。

悲しい過去を語る女の話は人の記憶。

微笑む女の顔。
それは聖女の証なのだろうか・・・

 

最後に一言。

貴方にも彼女が見えますか?

第13話 
暗い公園のベンチに座っている老人に
裸足の少女が近づき、そして老人に訊ねました。
「おじいちゃん、誰か待っているの?」
すると老人は、ゆっくりと答えました。
「もう来ているよ」
「どこに?」
「あなたを待っていたのです」

少女は、とくに驚いた様子もなくニッコリ笑うと
「昨日、私が会った男の子のお話を聞きたいのね?」
そう言うと老人の隣に座り、やさしい口調で
「その子は、おじいちゃんのことを怒っていなかったよ」

そう聞いた老人は「ありがとう」と言い残し去って行きました。
その老人の後姿を見送っていた少女の隣に
ひとりの男の子が、いつの間にか立っていました。

少女は、その男の子に訊ねました。
「何故あなたを待たずに老人が去ったか知りたいのね?」
「うん」
少女は老人と同じ声で
「忘れてしまった自分に会うのがこわかったから・・・」と
男の子に話しました。

 

最後に一言。

過去に問いかけても答えはないんですよね。

第14話 戦士
彼が最も信頼する、その友の敵、”あいつ”。
友に安息の日々を与える約束をし、彼は戦士となった。
すべてを犠牲にし、いずれ訪れる戦いの日に備え今日まで生きて来た。

・・・何があっても敗れるわけにはいかない。

時は流れ、勝利を手に老いた彼が知った真実。
それは戦うべき相手が “あいつ” ではなかったこと。

そして、その信じがたい真実は・・・

友の敵は、人々から ”悪魔” と呼ばれる哀れな犠牲者であり
真に戦うべき相手は、人々から “神” と拝められる彼の友。

長い時間、彼の間違いは正される事なく
人々からは賛美の言葉が送られた。

そして今、彼は友に手紙を書いています。
次に現れる ”悪魔” は、かつて ”あなた” が友と呼んだ男だと・・・

 

最後に一言。

真実は価値観に勝りますかねぇ・・・。

第15話 時間
小さな村で過ごした少年は、その生活を捨て
見知らぬ地へ旅立つ日を、来る日も来る日も夢に見ました。
やがて希望に満ち溢れた少年は長い旅に出ました。

時間は静かに流れながらも、そんな少年を大人に変えました。

そして、あの時の少年は村に戻って来ました。
でも知った顔の村人は一人もいません。
村に建ち並ぶ家も、辺りの川や野原も
何もかもがあの日と変わらないのに・・・

人は、その瞬間を生きなければ
その時間を手に入れる事が出来ないのだろうか・・・

大人になった少年は、村外れの小さな小屋に住みました。
再び訪れる、その瞬間を待ちながら・・・

 

最後に一言。

似たような時間に逢う事が出来ても
同じ時間を見る事は不可能ですよね。

第16話 消滅
どのくらい意識を無くしていたのか・・・
気がつけば大きな川の前に立っていた。

案内人らしき者が、目の前にある小舟を指差した。
彼に乗れと言っているのだろう・・・
頭に覆っている大きなフードと逆光のせいで
その者の顔は解り難かったが、彼は言われるがまま
当然のように小舟に乗った。

案内人を残し、小舟はゆっくり動き出した。
川の流れに逆らって・・・

そして彼は気づいた。
生きて来た時間と同じだけの時間をかけ
今、彼は再び時間を逆行していることに・・・

楽しかった事、悲しかった事。
全てを再現しながら30代、20代へと・・・

もう彼の頭に残っている記憶は10代まで
「このまま進んでいくと最後には・・・」
そんな彼の不安とは関係なく空気は流れる。

そして全ての記憶が消え果てた時・・・

 

最後に一言。

元々でしょう。

第17話 氷る風
彼女は彼に言いました。
「火照った頬に当たる風がとても優しく気持ちがいい」

彼は彼女にやさしく微笑みました。

数週間後、彼女は彼に言いました。
「風が氷っていく・・・」

彼は彼女に何も言えませんでした。

再び彼女が彼を訪ねて来たのは数ヶ月後のこと。
「風が氷ってしまった」
彼女は泣いていました。

彼もまた涙を流しながら彼女を見つめていました。

あれから1年・・ 2年・・ そして3年と月日は流れるけれど
彼女からは、なんの便りもありません。

思い返してみれば、彼女に彼が話しかけたことは
一度も、ただの一度もありませんでした。

彼はたくさんの言葉を用意して
今、彼女を待っています。

 

最後に一言。

何事にも時期があるんですよね。

第18話 ゆ・め・・

古い時の人に恋した彼女は
もう何も見たくないと言い残し
その黒い瞳にふたをした。

最初に彼女の前から消えたのは笑顔が似合う友。
次に、涙の似合う友が姿を消し
最後に、何時もうつむいていた友が消えた。

もちろん何も見ようとしない彼女に
そんな事を知る由もなく
ただ意識の中を生きているだけ・・・

 

最後に一言。

その先に何があるのでしょうかね。

第19話 

部屋の隅でひとり蹲っている。

体を震わせながら外に出ようとする凶暴さを
必死で封じ込め平静を保っているけれど
その目には、やり切れない淋しさを残している。

心に住みついているふたつの顔を
彼は、まだ見たことがない。

いつも暗い影で覆われた顔と
いつも眩しい光の中で語りかけてくる顔。

けして同時には現れない。

でも、いつの日か光は影を照らし
影は光を和らげてくれる事だろう。

その時、彼は・・・
すべてを知る事が出来るだろう。

 

最後に一言。

知ったところで何も変わらない事を
彼は知っているのでしょうかね。

第20話 歪み

ひとつの絆が切れた時
ふたりは別々の時間に生きた。

ひとりは時計の針を止め
ひとりは必要以上に進めた。

時間の共有に喜びを感じたふたりが
今は、対照的な時間に生きている。

もう時間を共有する事はないけれど
古い時間と新たな時間が交差する中で
ひとりは鬼を創り出し
ひとりは新しい生命を生み出した。

やがて生命は育ち鬼と出会うことになるだろう。
その時・・・ 時間の歪みが繰り返される。

 

最後に一言。

あなたは歪みを正せますか?