第1話〜第10話

第1話 男と女の童話
二人の女性が、それぞれの恋愛について語っていました。
一人は「何を犠牲にしても悔いは残らない」と
もう一人の女性は「その為に、すべてを犠牲には出来ない」と

ちょうど同じ時間、別の場所で彼女達の恋人達も
同じ話題で盛り上がっていました。

初めに書いた女性の彼氏が、自分の彼女と同じ事を言い
後に書いた女性の彼氏も、また自分の彼女と同じ事を言いました。

月日は流れ、あの時の女性二人が
あの日と同じように語り合っていました。
それぞれ別れた恋人を思い出しながら・・・

初めに書いた女性が語りました。
「前の彼氏ほど夢中にさせてくれる人が現れない」と

もう一人の女性も語りました。
「新しい恋人が出来、あの時より幸せ」だと

その頃、違う場所で
その彼女の彼氏も、また友人に語っていました。
「すべてを犠牲にしてまで、今の彼女との仲を守りたいとは思わない」

その話を聞いていた友人は
初めに書いた女性の元恋人だったとか・・・。

 

最後に一言。

あなたは
どのタイプでしょうか?

第2話 ピ・エ・ロ
その日、ピエロはとても怒っていました。
でも少女の目に映るのは、いつも見ているおどけた顔の彼。
少女は、笑いながら近づきました。
そして・・・ 化粧の下の顔に気づきました。

彼に背を向けた少女は、ゆっくり遠ざかって行きました。
気が遠くなるほど、ゆっくり・・ ゆっくりと・・・
そして振り返ることもなく、彼の声を聞くことすらしないで・・・

大人になった少女は、もう彼を見ても近づこうとはしませんでした。
彼の、おどけた化粧の下に隠れている、もうひとつの顔を憶えていたから・・・

でも彼女は知らないのです。
彼の怒りは、悲しみと淋しさ。
けして傷つけるようなことはしないのに・・・

 

最後に一言。

ピエロは嫌いです。

第3話 夢? それとも夢?
今日もタカは
その背にヒヨコを乗せて大空をゆっくり舞っていました。

楽しそうなヒヨコの顔からは
タカに寄せる信頼、安心感などが満ち溢れていました。

ある日
ヒヨコは、自分の力で大空を飛びたいとタカに言いました。
タカは返事に困ってしまいました。

あの日から、ヒヨコは飛ぶ練習をしました。
もう長い間、タカの背に乗って一緒に大空を飛び回っていません。

タカは自分の背に、またヒヨコが乗りに来る日を待ちました。
でもヒヨコの決心は強く、今日も飛ぶ練習に明け暮れていました。

ある日、タカのもとにヒヨコが訪ねて来ました。
そして約束させました。

今から空を飛んで見せるから
何があっても、そこから動かないで・・・と

ヒヨコは崖の前に立ち、その小さな翼を広げました。
そして飛び立ちました。

でもタカの位置からは、ヒヨコが転落したのか
飛び立って行ったのか、よく解かりませんでした。

タカは待ちました。
昨日も、今日も・・・

 

最後に一言。

明日も?

第4話 美しき瞬間
闇の中で、密かにその姿を変えていた。
白い羽は、黒く鈍い光を放ち
そして血管が浮き出た手。
長く伸びた爪は、先で三日月型に曲がっていた。

振り向いたその顔は
笑っているかのように見えたのだが
大きく開いた唇が、そう思わせた。

彼・・・ それとも彼女?

何故、ふたつの心を使い分ける必要があるのだろうか・・・

黒い翼は闇に紛れ大きく羽ばたき
大きく裂けた口は何を語り
長く伸びた爪で、何を掴み取ろうというのか・・・

今、確かなことは
良き友人が我々の敵に転じた。

 

最後に一言。

あなたは何を術に
戦うのでしょうか・・・。

第5話 その時
深い森に迷った少年は
銀で作られた古い鏡を拾い
その中に映る自分の顔を見ました。

次の瞬間

少年の目からは、一筋の涙が流れ落ちました。

今度は、鏡を通して周りの景色を映してみました。
すべての草木や花。
そして生き物が醜く歪んで見えました。

少年は悟りました。

もう二度とこの森から出られないことを・・・

どのくらい眠っていたのか
辺りはすっかり暗くなっていました。

何かが違う・・・

異変を感じた少年は気づきました。
鏡の中から森を見ている自分に・・・

 

最後に一言。

何事も突然始まり
そして・・・
あっ気なく終わってしまうものですよね。

第6話 いらつき
悪人になり切れない人と、善人と呼ぶにはふさわしくない人が
悲しくもないのに泣いている人の側で共に笑っていた。

何がおかしいという訳でもないが、ただ・・楽しそうに笑っていた。

いつしか泣いていた人は、唇を震わせながら怒りの言葉を発した。

「・・・!」と

それでも笑いは止まなかった。
次に彼がとった行動は <・・・> だった。

その後、通りすがりの人が
ただじっと黙ったまま睨み合っている三人に話しかけた。

「・・・?」と

だが、彼らは何も答えなかった。

答えを知りたいと思った通りすがりの人は、その場に立ち止まった。

やがて黙ったまま動こうともしない4人を横目で見ながら
何も言わずに ・・・ 去った人がいた。

 

最後に一言。

答えなんて必要ですか?

第7話 共存
今度こそ、この時間に生きてみようと・・・
でも気がつけば、また流れている。

何処に向かおうとしているのか・・・
けれど留まろうと思ったこともあった。

振り返って望めば、あの時空に戻れることだろう。
だが、同じであるはずがない。

望まれたゆえに立ち止まり
今、また望まれたからこそ進み出した。

もう二度と動きを止めることはないだろう。
たとえ・・・ たとえ切実に望まれたとしても・・・

 

最後に一言。

存在しないものがある矛盾。

第8話 ズレ
羽に傷を負い、危険な地上に怯え
震えている鳥を見た狼は、その鳥をやさしく銜え
自分の群れから遠く離れた所に連れて行き
安全な巣を作り、そして二度と飛べない鳥のために泣いた。

外敵を寄せ付けない強固な作りの巣で
鳥は、地上でも安全な日々を送ることが出来た。

そして狼は、毎日のように食べ物を鳥の巣まで運んだ。
孤立した鳥にとって、それは唯一楽しみにもなっていた。

そんなある日、空っぽの巣を見た狼はうろたえた。
飛べないはずの鳥が空の上から狼を見ていた。
狼は、黙ったまま食べ物だけを巣に残して立ち去った。
次の日も、また次の日も・・・

やがて巣の中は
鳥のために運び込まれた食べ物で一杯になった。
狼は空を見上げ、そして待った。
だが、鳥が空から降りてくることはなかった。

今は空を見上げても、もう鳥の姿はなかった。
誰も住まなくなった巣に鍵をかけ
やがて群れにも戻らず、狼は誰に知られることなく
ひっそりと暮らした。

もう空を見なくなった狼は知らなかった。

今、何かを探し求め
群れから離れ、空を飛びまわっている鳥がいることを・・・

鳥は知っていたのだろうか・・・
狼には待つだけの時間が、もう残っていないことを・・・

 

最後に一言。

鳥は空に、狼は地上に・・・
それが本当に自然?

9話 もしも
進もうか・・・ 引き返そうか・・・
走ろうか・・・ 歩こうか・・・
待ってみようか・・・ それとも・・・

いつも迷っている少年は
今、大きな河の前で、また迷っていました。

飛び越えられそうでもあり
飛び越えられそうもないこの河。
もし落ちれば激流にのまれ
再びこの足で大地を踏むことはないだろう。

やはり遠まわりをしよう・・・ それとも跳んでみようか・・・
やがて日は暮れ、辺りは真っ暗になっていた。
でも少年は、まだ迷っていた。
次の日も・・・ そして、また次の日も・・・

無駄にした時間を思えば、もう回り道は出来なかった。
自分で自分自身を追い込んでしまった少年は
いきなり立ち上がったかと思うと、意を決して
力いっぱいに向こう岸めがけて跳びました・・・

悲しいことに、激流にのみこまれた少年は
どんどん流され、薄らいで行く意識の中で
「もしも・・・」

 

最後に一言。

もしもって、どの時なんでしょうかね?

第10話 帰還
心の鬼を封じ込めてくれる不思議なペンダント。
彼は、とても穏やかな気持ちで毎日を過ごすことが出来ました。

けれど何の前触れもなくペンダントの鎖が切れました。
彼には、どうしてもそれを繋ぐ事が出来ませんでした。

もはや彼の目に優しさはなく
その口から、甘い言葉は二度と聞くことが出来ないことでしょう。
そして、やさしく温かかったその手は
今、触れる物すべてを壊してしまう。

穏やかな日々の記憶が消えたわけでもないのに
何故、この鬼を封じ込める事が出来ないのだろう・・・

とてもゆっくりではあるが彼は歩き出しました。

もう誰が呼びかけようとも彼の耳には音そのものが存在しない。
行く手を阻むものは全て敵とみなし、声かけてくるもの全て傷つけ
ただひたすらに・・・ ひたすらに歩いて行きました。

 

最後に一言。

彼の行こうとしている所がわかりますか?